2009年5月17日

扇町寄席のスタッフによる収録裏話。
今回は、3回目(2008年12月2日収録)の収録で、 お囃子の一人、桂しん吉さんにお聞きした裏話を公開します。

■三味線危機一髪!

落語会には、「ハメモノ」や「出囃子」を演奏するお囃子さんが欠かせません。
太鼓や笛は噺家さんが自ら演奏するのですが、三味線だけは必ず専門の方に来ていただいています。それを踏まえてのお話です。
しん吉さんが出演した、京都のある落語会でのこと。
開演時間が近づいてきたのですが、なかなか三味線の人が来ない。
「おかしいな?」と、落語会を主催している噺家さんがよくよく考えてみると、
なんと「三味線を頼んでなかった」ことが判明しました。
「今日のお囃子どないするねん!?」楽屋に広がる動揺・・・
すると、その噺家さんは何を思ったのか、突然舞台に上がり、
客席に向かってこう言いました。
「この中で、どなたか三味線が弾ける方はいませんか!?」
まるで、飛行機の中で妊婦が産気づき、フライトアテンダントが
「この中でお医者様はいませんか?」と言うベタなドラマの1シーンのようですが、そんなことを本当にしたんです。
すると客席に、三味線の稽古をされている人がたまたま来ていて、
その人に急遽弾いてもらって無事に落語会は終わったそうです。
意外となんとかなるもんですね・・・

■下座あるある

お囃子さんは舞台の袖、いわゆる「下座」にスタンバイして必要なタイミングで演奏をするのですが、たまにはハプニングもあるそうです。
では実際に下座で起こったハプニングを3つご紹介します。

《1》「行方不明!」
通常、舞台で噺家さんがサゲ(オチ)を言うと、「デンデン!」と太鼓を鳴らしてからハケ囃子(退場曲)の演奏が始まります。ところが、ごくたまに、サゲを言ったときに舞台袖に太鼓の担当者がいないことがあるそうです。トイレに行っているのか、自分の出番に備えて稽古をしているのか、どこかで居眠りをしているのかはわかりませんが、とにかくいない。もちろん三味線の人が探しに行くなんていう時間は無く、そういうときはしばらく三味線だけで演奏するそうです・・・

《2》「やかましい!」
お囃子さんがスタンバイしている舞台袖は、当たり前ですが舞台のすぐ横です。
なので落語の最中の下座では、しゃべるときは声を潜めてしゃべり、移動するときはそ~っと歩いて、極力音を立てないようにします。
ところが、細心の注意を払っているにもかかわらず、銅鑼(ドラ)を蹴とばしてしまい「ドンガラガッシャーン!と大きな音をさせてしまうことがあるそうです。
舞台上や客席にもその音が聞こえ、あとで思いっきり怒られるそうです・・・

《3》「これ何の曲?」
三味線を弾いていると、ときどき弦が切れてしまうことがあります。
練習中だとすぐに修理をすることができますが、落語会の本番中、ハメモノや出囃子などを演奏しているときに切れてしまうこともときどきあります。曲の途中なので弦の張替えはできず、仕方なくそのまま弾き続けると、鳴るべきはずの音が鳴らないので、「なんだかよくわからない曲」になってしまうことがあるそうです。もちろん、その曲が終わるとすぐに張替えをして次の曲に備えます。

以上、3つのエピソードをご紹介しましたが、
お客さんから見えない下座ではこんなことが起こっているんですね。
これから落語を見るときは、下座の様子を想像するのも楽しいかもしれません。


■どうにかこうにか事件

落語会ではときどき「お囃子紹介」という、お囃子さんが舞台上で演奏しているところをお客さんに見せるという趣旨のコーナーがあります。
あるとき、「では今から出囃子のリクエストを受け付けます。リクエストしていただければ何でも演奏しますよ」と、お客さんから募ったところ、ある東京の噺家さんの名前が挙がりました。すると、司会者、三味線、太鼓、笛・・・つまりその場にいた全員の顔が一瞬にして曇りました。そうです、全員がその噺家さんの出囃子を知らなかったのです。しかし「何でも演奏する」と大見得を切っているので「わかりません」とも言えず、やむをえず当たり障りのない曲を弾いてなんとか誤魔化したそうです。誤魔化せたということは、リクエストしたお客さんもどんな曲か知らなかったんですね・・・

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