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岡安譲のSweetsのススメ

レディーボーデンの「バニラアイス」(2)

子供心に大きな衝撃を受けたレディーボーデンのおいしさ。
しかしレディーボーデンは当時の高級アイスの代名詞。子供の僕がそう易々と手に入れられる代物ではない。しかもたまに母が買ってきてもその大部分を姉が占領してしまう。
何とかしてラージパックごと独り占めできないものか考え抜いたある日の晩、意を決して誰もいない台所に忍び込んだ。
「買えぬなら作ってしまえレディボーデン」である。
ボウルに卵・牛乳・砂糖・バター・はちみつなどを全て目分量で入れ、適当にかきまぜる。
そしてそれをレディーボーデンの空パックに注いで冷凍庫へ。
これで翌日にはとろけるようなレディーボーデンがたんまり完成する はずだった。
いや子供心に本気でワクワクした。何度も冷凍庫の扉を開けたり閉めたりした。

で、翌日。なんというかちょっと黄色がかった乳白色の部分と透明な上澄みの2層に分かれた、明らかにイメージとはかけ離れた「カタマリ」が出来上がっていた。
見た目明らかに失敗であることは子供心にもよく理解できた。たぶんマズイだろうなとは思いつつ、意を決して下層部分にスプーンを入れ、口に運ぶ。すると…
「おおおお!!!!」これが、想像以上にマズかったのである。
期待が大きかっただけに落胆もまた大きかった。しかも勝手に台所の食材を訳のわからんものに費やしたと母にこっぴどく怒られた。まさに泣きっ面に蜂だ。
…思えばあれが人生初めての挫折であった。確かその日は学校を休んだ気がする。
結局その後もレディーボーデンをめぐっての姉弟ケンカは絶えず、抗争は泥沼化の様相を呈し始めた。しかしそんなある日、あるアイスクリームの登場によって突然このレディーボーデン抗争に終止符が打たれることになる。

そのアイスクリームの名は「宝石箱」。今「あ〜あれね!懐かしい!!」と思っている方は恐らく28歳以上であろう。当時ピンクレディーのCMで一大ブームを築いた(?)シロモノだ。
大ぶりな容器(今の明治のスーパーカップよりさらに大きかったと思う)にギッシリのバニラアイス。そのなかに緑もしくはピンクの氷のかけらがちりばめられていた。
味のグレードは当然レディーボーデンより低かったが、それでも1パック120円(当時アイスは30円〜50円の時代)という値段と黒地にまばゆい光を放つパッケージデザイン、さらにベタでありながら高級感あふれるネーミング。まさに世の子供たちの憧れの的であった。
この宝石箱はビッグサイズであるものの一人一個をコンセプトに作られていたため、姉弟にそれぞれ一個ずつあてがわれ、以降アイスをめぐる姉弟ゲンカは完全になくなったのだ。

考えてみればあれからもう四半世紀も(!)たつ。「宝石箱」は引退し、もはや完全に過去のものになったが、レディーボーデンはチーム移籍(明治→ロッテ)しながらもいまだにバリバリの現役だ。ハーゲンダッツなどの強力なライバルが現れコンビニに居場所をなくしてもスーパーなどで相変わらず頑張っている。そんな姿を目にするとついつい手が伸びてしまう。
そして、夢だった「パイント食い」を敢行し悦に入るのだ。少しほろ苦く恥ずかしいあの思い出を噛みしめながら…


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